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東京地方裁判所 平成4年(ワ)8537号 判決 1998年9月30日

東京都豊島区南池袋一丁目一六番一八号

原告

株式会社エムアンドシーシステム

右代表者代表取締役

橋本哲夫

右訴訟代理人弁護士

沖信春彦

出縄正人

平石孝行

右訴訟復代理人弁護士

保坂美江子

辻哲哉

右補佐人弁理士

川崎仁

川崎市中原区上小田中一〇一五番地

被告

富士通株式会社

右代表者代表取締役

関澤義

右訴訟代理人弁護士

植松宏嘉

右補佐人弁理士

井桁貞一

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、別紙物件目録記載(一)、(二)、(三)及び(四)の物件を製造し販売し又は第三者に使用させてはならない。

二  被告は原告に対し、金六億五四〇〇万円及びこれに対する平成四年六月一一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実等

1  原告は、昭和五九年九月一日、株式会社丸井(以下「丸井」という。)の一〇〇パーセント出資により設立された、コンピュータソフトウェアの開発・販売等を目的とする株式会社であり、設立以来、M&Cカードシステムと称する自社カード(各企業が自らカードを発行し、自社の顧客管理等を行うカードをいう。)のシステムを小売業者に販売してきた。

被告は、昭和一〇年に設立された、電子機器・装置の製造販売を業とする株式会社であり、被告製の大型コンピュータで稼働するカードシステムを他社に導入する営業を行っている。

2  原告のM&Cカードシステムは、ホストコンピュータと端末のPOSシステム(販売時点管理システム)を組み合わせ、小売店舗においてクレジットと現金払のどちらにでも対応できる磁気カードを用いた累計ポイント管理を行うシステムである。これは、従来ブルーチップないしグリーンスタンプなどと称される切手類似の印刷物を店頭において交付することにより行っていた一般消費者サービスに代わるものであって、小売店の顧客である一般消費者に自社の磁気カードを発行し、顧客が商品の購入等で磁気カードを使用する度に、その購入金額に対応したポイントを設定し、今回購入時のポイントと前回購入時点までのポイントを合わせ、その累計ポイントを磁気カード上に記録しかつレシート上に表示し、さらに、右累計ポイントを顧客データバンクに電送して記録するシステムである。

3  原告と被告は、訴外株式会社金市舘(札幌市中央区南二条西二丁目二番地、以下「金市舘」という。)が原告のM&Cカードシステムを導入するに当たり、金市舘の使用する被告製造のPOS機器においてM&Cカードシステムが稼働するようにするため、昭和六三年八月二二日、「M&Cカードシステム対応POSシステムの製造販売に関する契約」(以下「本件契約」という。)を締結した(但し、被告は契約締結日が同年七月二五日であると主張しており、この点については争いがある。)。

本件契約には、次の条項がある。

第四条(本POSシステムにおける情報提供分担の確認)

1項 本POSシステムのうち、甲(原告)提供の情報にかかるものは下記のとおりである。

本POSシステムにかかわる磁気カードを使用した現金取引、クレジット取引及びその顧客管理に関する次の事項である。

7号 お買上金額に応じたポイント発行を行なうカードポイントシステム

<1> 磁気カードへのポイント書込みシステム

<2> レシートへの累計ポイント表示システム

第五条(秘密保持)

1項 甲(原告)及び乙(被告)は、本POSシステムの開発に伴い、相手方より開示を受けた情報については、それが特許権・実用新案権として登録されていると否とにかかわらず相互に相手方の機密情報として保持し、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする。但し、下記の情報についてはこの限りではない。

<1> 当事者の一方が相手方から開示を受けまたは知得した際すでに自己所有していた情報であって、所有の事実を信頼すべき証拠により証明しうるもの。

<2> 相手方から開示を受けまたは知得した際にすでに公知または公用の情報および開示を受けまたは知得した後に自己の責に帰さない事由により公知または公用となった情報。

<3> 秘密保持の対象から除外する旨の書面による事前承諾を相手方から与えられた情報。

第八条(本POSシステムの無体財産権)

1項 本POSシステムに関連した発明、考案等についての工業所有権(出願する権利を含む。)及び著作権の帰属は以下の通りとする。

第一条記載の本契約の目的に鑑み本POSシステムに関連する工業所有権・著作権(以下、本無体財産権と総称する。)は原則として原告に帰属する。

但し、本無体財産権が第四条二項記載の情報を含む乙(被告)の固有の情報から単独に生成された場合又は本無体財産権につき乙(被告)の費用負担、若しくは乙(被告)の新規情報による多大の貢献がある等の事情があると認められる場合、本無体財産権は甲(原告)・乙(被告)の共有に属するものとする。なお、本POSシステム用に被告が新たに開発したプログラム著作権は、甲(原告)・乙(被告)共有であることを確認する。

2項 前項但し書きにより、甲(原告)・乙(被告)共有に属した本無体財産権については甲(原告)及び乙(被告)は相手方の許諾がなければ、これを第三者に使用・複製・改変の許諾をしてはならない。

4  原告は、別紙工業所有権出願目録記載三の実用新案登録出願をし、同出願は、別紙公告目録記載のとおり、平成四年四月二七日、出願公告がなされた。

5  被告は、次の<1>ないし<9>の各店舗に被告製造に係るPOSシステム端末機(以下「POS端末機」という。)を販売し、右各店舗においては、右POS端末機を設置して使用している。

<1> 協同組合落合ショッピングセンター(岡山県真庭郡落合町大字垂水四二六番地の一 店名「サンプラザ」、以下「落合ショッピングセンター」という。)に属する各店舗

<2> 協同組合美作ショッピングセンター(岡山県英田郡美作町入田二〇一番地の三 店名「ファミリータウン・リオ」、以下「美作ショッピングセンター」という。)に属する各店舗

<3> 福井アーバンカード事業協同組合(福井県福井市中央一丁目三番一号、以下「福井アーバンカード」という。)に属する各店舗

<4> 株式会社魚津興産(富山県魚津市駅前新町五番三〇 店名「サンプラザ(魚津ショッピングセンター)」、以下「魚津興産」という。)に属する各店舗

<5> 株式会社ジョイフル朝日(大阪府豊中市庄内西町五丁目一番一九号、以下「ジョイフル朝日」という。)に属する各店舗

<6> 株式会社サンプラザ(高知県土佐市高岡町乙二七番地一、以下「サンプラザ」という。)に属する各店舗

<7> 株式会社バザールフーズ(石川県金沢市問屋町三、以下「バザールフーズ」という。)に属する各店舗

<8> 株式会社ラルズ(札幌市豊平区平岸一条一丁目九番六号、以下「ラルズ」という。)に属する店舗

<9> 株式会社チューリップ(富山市野々上一五番地、以下「チューリップ」という。)に属する店舗

二  本件は、原告が、「被告が製造販売した前記一5のPOS端末機は、別紙物件目録記載(一)ないし(四)の物件であるところ、同目録記載(一)及び(二)の物件の製造販売は本件契約第八条二項に違反し、同目録記載(三)の物件の製造販売は本件契約第八条二項に違反し、かつ、前記一3の出願公告された別紙公告目録記載の考案の実施権(平成五年法律第二六号による改正前の実用新案法(以下「旧実用新案法」という。)第一二条一項、以下「本件仮保護の権利」という。)を侵害し、同目録記載(四)の物件の製造販売は本件契約第五条一項に違反する。」と主張して、同目録記載(一)ないし(四)の物件を製造し販売し又は第三者に使用の許諾をすることの差止めを求めるとともに、本件契約第五条違反及び第八条違反の債務不履行による損害賠償を求める事案である。

三  争点

1  被告に本件契約第五条に違反する行為があったか。

具体的には、原告が被告に開示した情報の内容、この情報が本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるかどうか、被告が右情報を漏洩したかどうかが争点である。

2  被告に本件契約第八条に違反する行為があったか。

具体的には、本件契約第八条の解釈が争点である。

3  被告に本件仮保護の権利を侵害する行為があったか。

4  損害の有無及び額

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(本件契約第五条違反の有無)について

1  原告の主張

(一) 小売業者にとっては、いかに多数の消費者に繰り返し安定的に購買してもらうかが営業利益を維持拡大するための不可欠な条件である。このためのアイデアの一つが自社カードシステムである。自社カードにおいては、カード発行時のみでなくその後の契約ないし支払状況による直近の情報により与信を行うことができるので、不良客の発生防止をすることができる。また、他社カードではカード会社に流れてしまう顧客手数料及び加盟店手数料が不要になり、収益性を増加させることができるうえ、他社カードではカード会社に流れてしまう顧客のデータを自社で蓄積活用して、顧客毎に差別化したサービスの提供(例えば、過去の購買記録により、顧客ごとに関心のありそうな商品について集中的にダイレクトメールを送る等)を行うことができる。M&Cカードシステムは、このような自社カードのシステムである。

また、小売業における顧客の大部分は現金払客(以下「現金客」という。)であるため、現金客を顧客として固定化することが特に重要となる。そのため、M&Cカードシステムは、現金客にも磁気カードを発行して、購入金額に応じたポイントを購入の都度磁気カードに記録し、同時にレシートに累計ポイントとして表示することができる仕組み(以下「カードポイントシステム」という。)を特徴としており、顧客が買物をする度にカードを提出すると、カードの磁気部分にポイントがたまり、ある一定のポイント数に達すると値引、割引等の特典が受けられる仕組みとなっている。顧客はレシート上に表示される累計ポイント数を確認することができるので、これによって消費意欲が助長され、小売業にとって購買顧客を継続的に確保することができるのである。

(二) 原告は、設立以来、小売業に対するM&Cカードシステム導入の営業を推進してきたが、各小売店へのM&Cカードシステムの導入のためには、既に各小売店にレジスター等のPOS端末機を納入していた電子機器メーカーに対し、原告のM&Cカードシステムに関する情報を開示して、POS端末機がM&Cカードシステムに対応できるようにする必要があり、これは導入を希望する小売店のためには避けられない作業であった。

しかし、M&Cカードシステムに関する情報は、原告がクレジットカードの深い経験及びカードポイントシステムを実際に稼働させてきた経験に基づき蓄積してきた貴重な情報であり、原告の営業基盤の重要な一環をなし、小売商業的視点からの営業機密が含まれているため、これをPOS端末機の電子機器メーカーに開示することは、特に当該電子機器メーカーがカードシステムのパッケージソフト導入を営業している場合は、極めて慎重にならざるを得なかった。なぜなら、原告にとり、電子技術的に優位に立っている、日本を代表する電子機器メーカーに小売商業的な情報まで開示して自由に使用させてしまうことは、原告自らの営業上のアドバンテージを放棄することになるからである。

そこで、原告は、原告の機密情報であるM&Cカードシステムに関する情報の開示について、開示先の電子機器メーカーから第三者への流出防止を配慮しつつ、導入希望顧客の満足を図る営業を行う方式として、以下の方針を貫いてきた。すなわち、各電子機器メーカーがそのユーザーに対し、原告から開示を受けたM&Cカードシステムに関する情報を使用して現在又は将来において自社カードシステムを提供する場合は、原告との共同行為下でのみ自社カードシステムの提供を行うこと、その代わり、原告は、各電子機器メーカーに対しM&Cカードシステムに関する情報を、使用料等の対価を徴収せず無償で開示することを営業方針としてきた。具体的には、各電子機器メーカーとの間で、M&Cカードシステムに対応したPOS端末機の製造のために必要な原告が有する出願中の権利を含む特許実用新案権等の工業所有権その他のノウハウ等の情報を開示し、その使用をM&Cカードシステムの導入先に限定して許諾するライセンス契約と、製造されたPOS端末機を右導入先にのみ限定して販売することを許諾する販売許諾契約の二つから構成される契約を締結し、導入希望の小売業顧客の要求を満たし、かつ、自己の機密情報を防衛することの両立を目指してきた。

(三) 原告は、昭和六二年一一月七日、大規模小売業を営む金市舘との間で、M&Cカードシステムを金市舘に導入する旨の契約を締結した。そして、金市舘が使用する被告製造のPOS端末機をM&Cカードシステムに対応させるため、被告に原告の保持するM&Cカードシステムに関する情報を開示することとなり、被告との交渉の末、昭和六三年八月二二日、本件契約を締結した。

(四) 本件契約は、POS端末機の製造のために必要な原告が有する出願中の権利を含む特許実用新案権等の工業所有権その他のノウハウ等の情報を開示し、その使用を導入先である金市舘に限定して被告に許諾するライセンス契約と、製造されたPOS端末機を導入先である金市舘にのみ限定して販売することを許諾する販売許諾契約の二つから構成される契約である。

そして、右開示情報の範囲を確認したのが本件契約第四条(本POSシステムにおける情報提供分担の確認)であり、同条一項に基づき、原告が被告に開示した情報は、本件契約第五条一項の「本POSシステムの開発に伴い、相手方より開示を受けた情報」として保持されるべき対象となり、被告は、原告の事前の文書による承諾なしに右開示情報を第三者に開示又は漏洩してはならないものとされたのである。

(五) 原告は、被告に対し、本件契約第四条一項七号の「お買上金額に応じたポイント発行を行なうカードポイントシステム」の「<1>磁気カードへのポイント書き込みシステム」に該当する情報として別紙機密情報目録記載一ないし六の情報(以下、これらの情報を「本件情報一」などという。)を開示し、「<2>レシート上への累計ポイント表示システム」に該当する情報として同目録記載七ないし一〇の情報(以下、これらの情報を「本件情報七」などという。)を開示した。

本件契約第四条一項七号は、「お買上金額に応じたポイント発行を行なうカードポイントシステム」が原告の提供する情報であることを確認しているが、カードポイントシステムの第一の特徴は、磁気カードを来店した全ての顧客に発行し、そのカードの発行企業店舗における使用率、来店頻度及び携帯率等を向上させるために、商品の購入の都度カードを利用してもらい、そのカードの利用者に対して、購入額に応じたポイント(割引、景品等の特典のためのポイント)を与え、一回毎の少量のポイントを累計し、大きな特典として顧客に還元し、顧客の固定化、組織化を図ることができる点にあり、第二の特徴は、現金、クレジットの購入形態の区別なく共通の特典サービス(ポイントサービス)を顧客に与えることを通じ、現金購入の顧客だけでなく、クレジット購入の顧客の導入も可能となる柔軟性を持っている点にある。

それゆえ、特典としての累計ポイントを、顧客に一層効果的に告知し、顧客の固定化、組織化に役立てるためには、商品購入の都度、今回ポイント・累計ポイントを表示することが小売業的視点からは効果的であり、そのための情報が本件契約第四条一項七号の「<2>レシートへの累計ポイント表示システム」に関する情報である。また、カードポイントシステムを効果的かつ低コストで実施するためには、POS端末機に接続あるいは内蔵された磁気カードリーダーライターを使用してカードの磁気ストライプの記憶領域に累計ポイントを記憶させ、商品購入の都度、累計ポイントの読込み及び書込みを行うことが小売業的視点から効果的である。すなわち、商品購入の際、累計ポイントを把握するためには、過去の累計ポイント情報を持つ情報ファイルから情報を獲得(以下「ファイル・アクセス」という。)することが必要となり、このファイル・アクセスの手段として、オンライン回線で接続されたホストコンピュータ又は店舗のストアコントローラに過去の累計ポイント情報ファイルを持たせる方法もあるが、これらの方法はオンライン接続であるため、機械的トラブル等のオンラインダウン時には累計ポイントにファイル・アクセスできず、カードポイントシステムの効果を活用できないという問題が生じる。また、これらの方法では一店舗のみの小規模の小売業ではともかく、数店舗以上の店舗を有する小売・サービス業ではハード面・ソフト面のコストと処理時間の点で合理性を欠く。それゆえ、累計ポイントを磁気カードに書き込む方式が最も小売業的視点からは効果的であり、そのための情報が本件契約第四条一項七号の「<1>磁気カードへのポイント書込システム」に関する情報である。

(六) 本件情報一について

(1) 機密情報性

本件情報一において、原告実施のカードポイントシステムのカード番号情報及び累計ポイント情報がクレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされているダンプリスト一一桁目から二六桁目までの領域及び二七桁目から六九桁目までの領域にそれぞれ書き込まれるようにした理由は、以下のとおりである。

原告が実施していたカードポイントシステムにおいて、磁気カードは、現金専用ポイントカードではなく、クレジットカードとしても使用できるため、クレジットカード仕様を採用することにより、対応機器開発コストの縮小、キャッシュディスペンサーの他社との相互利用等が実現できる。

また、情報書込読取装置で磁気カード上の磁気ストライプ内の情報を書き込むとき、その磁気カードが当該店舗あるいは当該POS端末機で使用可能な磁気カードか否かを判断することは極めて重要である。なぜならば、磁気カードの誤挿入により銀行のキャッシュカードや銀行系・信販系クレジットカードの磁気情報を上書きし、磁気ストライプ上の固定情報を破壊してしまう危険性をはらんでいるからである。クレジットカード仕様においては、対応できるカードか否かのチェックを磁気ストライプ上の任意使用領域の前領域(ダンプリスト一桁目から一〇桁目)にカードIDマーク、業態コード、会社コード(流通コードセンターに全国のクレジットカード業者が登録して取得するもので、重複しないように付番されている。)の領域を設けて行っており、これにより右誤挿入による磁気ストライプ内の重要情報の破壊を避けることができる。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>ないし<5>のとおり、本件情報一の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報一を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> 落合ショッピングセンターに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ハローカード」を使用して現金払で買物をすると、同POS端末機内で今回及び累計ポイントを演算し、接続された書込読取装置でカードの磁気ストライプ部分(ダンプリスト二一桁目から二六桁目)へカード番号を書き込み、さらに同じく磁気ストライプ部分(ダンプリスト四四桁目から四九桁目)へ、レシート上に記載されている「ゼンカイマデ」及び「コンカイ」で表示されるポイント数の合計である累計ポイントを書き込んでいる。

<2> 美作ショッピングセンターに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ユーカード」を使用して現金払で買物をすると、同POS端末機内で今回及び累計ポイントを演算し、接続された書込読取装置でカードの磁気ストライプ部分(ダンプリスト二二桁目から二六桁目)へカード番号を書き込み、さらに同じく磁気ストライプ部分(ダンプリスト四八桁目から四九桁目)へ、レシート上に記載されている「ルイケイポイント」で表示される累計ポイントを書き込んでいる。

<3> 魚津興産に属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ソシアスカード」を使用して現金払で買物をすると、同POS端末機内で今回及び累計ポイントを演算し、接続された書込読取装置でカードの磁気ストライプ部分(ダンプリスト二〇桁目から二六桁目)へカード番号を書き込み、さらに同じく磁気ストライプ部分(ダンプリスト四四桁目から四九桁目)へ、レシート上に記載されている「ゼンカイマデ」及び「コンカイ」で表示されるポイント数の合計である累計ポイントを書き込んでいる。

<4> バザールフーズに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「バザールカード」を使用して現金払で買物をすると、同POS端末機内で今回及び累計ポイントを演算し、接続された書込読取装置でカードの磁気ストライプ部分(ダンプリスト二一桁目から二六桁目)へカード番号を書き込み、さらに同じく磁気ストライプ部分(ダンプリスト四四桁目から四九桁目)へ、レシート上に記載されている「ゼンカイマデ」及び「コンカイ」で表示されるポイント数の合計である累計ポイントを書き込んでいる。

<5> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ララカード」を使用して現金払あるいはクレジット払で買物をすると、同POS端末機内で今回及び累計ポイントを演算し、接続された情報書込読取装置でカードの磁気ストライプ部分(ダンプリスト一二桁目から二六桁目)へカード番号を書き込み、さらに同じく磁気ストライプ部分(ダンプリスト二七桁目から三二桁目)へ、レシート上に記載されている「ルイケイポイント」で表示される累計ポイントを書き込んでいる。

(七) 本件情報一の2について

(1) 機密情報性

磁気カード内に累計ポイントの最新更新年月日を入れておく理由は、カード不使用の買物について事後的にポイントを加算するなどのポイント強制処理をカードの読み取りだけで可能にするとともに、オンラインがダウンしてホストコンピュータから情報を読み取ることができないなどの緊急時やホストコンピュータの情報がバッチ処理されていることによって累計ポイント情報に時間的なずれがある場合でも、正確なポイントに関する手続を店舗の現場で行うことができるようにするためである。このような方式は、原告以外の第三者が行っていなかったものである。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>ないし<3>のとおり、本件情報一の2の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報一の2を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> 魚津興産に属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ソシアスカード」を使用して現金払で買物をすると、更新当日の日付が磁気ストライプ部分(ダンプリスト六〇桁目から六五桁目)に書き込まれる。

<2> バザールフーズに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「バザールカード」を使用して現金払で買物をすると、接続された書込読取装置で、更新当日の日付が磁気ストライプ部分(ダンプリスト六〇桁目から六五桁目)に書き込まれる。

<3> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ララカード」を使用して現金払あるいはクレジット払で買物をすると、接続された情報書込読取装置で、最新更新年月日がカード内の磁気ストライプ部分(ダンプリスト三三桁目から三八桁目)に書き込まれる。

(八) 本件情報一の3

(1) 機密情報性

右(六)(1)で述べたとおり、情報書込読取装置で磁気カード上の磁気ストライプ内に情報を書き込むとき、その磁気カードが当該各店舗あるいは当該POS端末機で使用可能な磁気カードか否かを判断することは極めて重要である。なお、誤挿入された場合は、POS端末機においてその旨を認識し、直ちにカードを排出するとともにそれ以降の処理を中止する。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する各店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がJISⅡ型カード規格に準拠した磁気カードである「ララカード」を使用して現金払あるいはクレジット払で買物をすると、接続された情報書込読取装置で、カードの磁気ストライプ部分の、二桁目(ダンプリスト一桁目)にあらかじめ書き込まれているカードIDマーク、三桁目(ダンプリスト二桁目)にあらかじめ書き込まれている業態コード、八桁目から一一桁目(ダンプリスト七桁目から一〇桁目)までにあらかじめ書き込まれている企業コードを読み取り、誤挿入のチェックを行っている。

右のとおり、被告は、本件情報一の3の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報一の3を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(九) 本件情報二について

(1) 機密情報性

カードポイントシステムにおいては、磁気カードのストライプ上に書き込まれた累計ポイント情報それ自体は視覚的には顧客には見えないため、レシートに印字された累計ポイント表示が磁気ストライプ上に書き込まれた累計ポイント数値として顧客に認識されることになる。それゆえ、顧客は、レシートに印字された累計ポイントが磁気ストライプ上に書き込まれた累計ポイント数と同数値であることを前提にして次の買物を行うことになる。このことから、買物終了後にレシートに印字された累計ポイント数と磁気カードのストライプ上に書き込まれた累計ポイント数は常に同一であることが至上命題となる。ところで、POS端末機プログラム内においては、計算結果エリアからそれぞれ、印字(プリンター)と磁気カードへの書き込み(情報書込読取装置)とを別々に指令している。それゆえ、両者の指令結果の同一性を担保するために、印字のタイミングと磁気カードへの書込みのタイミングを考慮し、まず先に磁気カードへの書込みを行い、その書込みが正しく終了したことを確認した上でその後に印字を行うことにより、レシートに印字された累計ポイント数と磁気カードのストライプ上に書き込まれた累計ポイントの数値が同一になる工夫をしているのである。

併せて、このタイミングの工夫により、万が一磁気カードへの書き込みが最終的にできなかった場合に、プリンターでのレシートへの印字をやり直し、その結果、長時間顧客を待たせるという危険性を回避できるのであって、これにより、カードポイントシステムへの顧客の信頼性を確保している。

(2) 被告の漏洩行為

落合ショッピングセンター、美作ショッピングセンター、福井アーバンカード、魚津興産、サンプラザ、バザールフーズ及びラルズに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、POS端末機内で累計ポイントの計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、まず同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントの値を移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書込みを開始させ、POS端末機に組み込まれたプリンターで印字を行う前に書込みを終了させている。

右のとおり、被告は、本件情報二の機能を有する被告製造のPOS端末機を右各店舗に使用させることを通じて本件情報二を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一〇) 本件情報三について

(1) 機密情報性

本件情報三の(一)の各項目について、POS端末機内のプログラム上に書き込んでしまうか、あるいはPOS端末機内にのみテーブルファイルを設定し、ストアーコントローラーには設定しない方式にすると、変更するたびにいちいちプログラム開発あるいはPOS端末機一台ずつのテーブルファイルの変更が必要となる。そこで、このような変更を容易にするため、テーブルファイルをPOS端末機とストアーコントローラー双方に持ち、ストアーコントローラーからPOS端末機にダウンローディングすることとしたものである。

本件情報三の(一)の各項目について変更を行うことができるようにしておくことは、次のとおり、各店舗の売上拡大政策に対応できるようにするために不可欠である。

<1> 商品毎のポイント倍率

例えば「今日は紳士服の日」などとして特定商品のみポイント××倍セールを行い、特定商品の売上向上を図るため、また、ポイントを付与しない商品(たばこ、切手など)に誤ってポイントを付与しないようにするためには、POS端末機に商品コードテーブルを設け、同ファイルにポイント倍率情報を設定するとともに、容易に商品毎のポイント倍率情報を変更することができることが必要である。

<2> 識別コード毎のポイント倍率

カードポイントシステムを導入するユーザーによっては、同一のカードシステムの中で数種類のカードを発行し、カード毎に異なるポイント倍率を設定することが考えられる(例えば、一般客に発行するカードは通常どおりとするが、外商客に発行するカードは五倍を付ける。社員カードは〇倍としてポイントを付与しない等の方策があり得る。)ので、識別コード毎のポイント倍率テーブルファイルを設定した上で同情報をテーブルファイル内に情報として持ち、容易にその情報を変更できるようにすることが必要である。

<3> 売上種別毎のポイント基準額

ポイントを一点付与するために必要な購入金額をいくらとするかは、ポイントシステムを導入するユーザーごとに違う場合が考えられる(スーパーの場合は通常一〇〇円としているが、百貨店は一客当たりの購入単価が高いため、一〇〇〇円程度とする場合がある。)し、売上種別により異なったポイント基準額とする場合が考えられる(現金の場合は一〇〇円で一点とするが、クレジットの場合は回収までに期間がかかるため二〇〇円で一点とする。)ので、売上種別毎のポイント基準額テーブルファイルを設定したうえで、同情報をテーブルファイル内に情報として持ち、容易にその情報を変更できるようにすることが必要である。

<4> 発券基準ポイント

ユーザーによって、発券基準ポイントが異なる可能性があり、さらに同一ユーザーにおいても将来発券基準ポイントを変更する可能性がある。また、磁気ストライプに書かれている累計ポイントが一定の点数になった場合にポイント券を自動的に発行する運用をとらず、顧客のリクエストがあったときだけサービスカウンターでポイント券を発行する運用をする場合がある。そのために、発券基準ポイントテーブルファイルを設定したうえで、同情報をテーブルファイル内に情報として持ち、容易にその情報を変更できるようにすることが必要である。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用している被告製造のPOS端末機においては、磁気カードである「ララカード」に書き込まれるポイントについて、商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード(カード種別)毎のポイント倍率、売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額及び発券基準ポイントを設けている。そして、それぞれの項目について、同POS端末機及びストアーコントローラーに対応するテーブルファイルを設定し、同項目の内容の設定・変更についてはストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングしてこれを行っている。

右のとおり、被告は、本件情報三の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報三を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一一) 本件情報三の2について

(1) 機密情報性

ポイントを一点付与するために必要な購入金額をいくらとするかは、ポイントシステムを導入するユーザーごとに違うものであり、スーパーの場合は顧客の購入額平均を考慮すると通常一〇〇円とするのが効果的である。また、五〇〇点を発券基準ポイントとすることにより、使用頻度を上げさせることができる。加えて、本件契約における情報開示時点では、額面七〇〇円以上のものには印紙税がかかることとなっていたことも、五〇〇円を発券基準としていた一つの理由である。このように、本件情報三の2は、小売業の現場の要請に密接に関連した情報である。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用している被告製造のPOS端末機においては、磁気カードである「ララカード」に書き込まれるポイントについて、ポイント基準額を標準設定で一〇〇円一点としており、発券基準ポイントを五〇〇点としている。

右のとおり、被告は、本件情報三の2の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報三の2を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一二) 本件情報四について

(1) 機密情報性

ポイント計算方法が多数考えられる中で、本件情報四の方法は、各店舗側にとって顧客を画一的に処理することができる卓越した方法である。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用している被告製造のPOS端末機においては、POS端末機内プログラムでポイント計算を行う際、次の手順に従って、商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード毎のポイント倍率、売上種別毎のポイント基準額のテーブルファイルの設定内容を当該プログラム内のエリアに読み込み、今回ポイント及び今回までの累計ポイントの計算を行う。その後、計算により算出された今回までの累計ポイントを磁気カードに書き込んでいる。

<1> 商品登録時

品番テーブルより該当品番のポイント倍率を得て、値引又は割引後の明細金額(商品価格)とポイント倍率の積を求める。同積を商品登録した全商品についてそれぞれ求め、ポイント倍率を反映させた累計金額(積の和)を計算する。

<2> 預り金入力後

売上種別(現金・一回払・分割払)のポイント基準額のテーブルファイルより選択されたポイント基準額を得て、<1>で求められた累計金額を同ポイント基準額で除算し、その商を求める。そして、同商の小数点以下を切り捨てて整数値を今回ポイントとし、同今回ポイントと磁気ストライプから読み込んだ前回までの累計ポイントを加算して、今回までの累計ポイントを算出する。

右のとおり、被告は、本件情報四の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗において使用させることを通じて本件情報四を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一三) 本件情報五について

(1) 機密情報性

カードを持っていない客が買物をした後でカードを作った場合、その買物にもポイントを付けて欲しいと言われることがよくある。カードを作った客に対して断ることは容易ではないので、このような場合にポイントを付与できるようにする必要がある。加えて、ポイントを付与することが不当景品類及び不当表示防止法上の景品に該当しないようにすることも必要であり、そのためには、割引券等の発券の基準に達していなくても顧客からの要求に応じて直ちに返金(割引)できるようにしておき、累計ポイント部分はあくまで割引のために顧客から預かっている「預り金」であることを明確にしておく必要がある。したがって、強制的にポイントを加算減算することができる仕組みが不可欠である。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>及び<2>のとおり、本件情報五の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報五を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> バザールフーズに所属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がカードなしで現金で買物をし、その後、磁気カードである「バザールカード」の発行を受けて同磁気カードを使用して買物をした場合、「カードキョウセイコウシン」として、カードを使用しないで買った買物のポイント数を強制的に付与することができる。

<2> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客がカードなしで現金で買物をし、その後、磁気カードである「ララカード」の発行を受けた場合、カードを使用しなかった買物のポイント数を、累計ポイントに強制的に加算することができ、これを情報書込読取装置でララカードに書き込むことができる。

(一四) 本件情報六について

(1) 機密情報性

前日の累計ポイント情報をホストコンピュータに残しておくことにより、磁気ストライプを傷つけあるいは紛失する等してカードを読み込めない場合に、前日までの累計ポイントを書き込んだ新たなカードの発行を顧客の要請に従って行うことができる。また、当日分についての累計ポイント情報をストアーコントローラー等において保存しておくことにより、バッチ処理によって累計ポイント情報の更新を行うことができる。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店においては、使用している被告製造のPOS端末機からホストコンピュータのバックアップ用のポイントファイルに対して、カード番号とともに磁気カードに書き込んだ累計ポイント数を送信しており、ホストコンピュータでは送信された累計ポイントをバッチ更新処理している。

右のとおり、被告は、本件情報六の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報六を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一五) 本件情報七について

(1) 機密情報性

右(九)(本件情報二)と同じ。

(2) 被告の漏洩行為

落合ショッピングセンター、美作ショッピングセンター、福井アーバンカード、魚津興産、サンプラザ、バザールフーズ及びラルズに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、POS端末機内で累計ポイントの計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントの値を移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書込みを開始させ、書込みが正しく終了した後に、同POS端末機プログラム内の印字エリアに累計ポイントの数値を移し、POS端末機に組み込まれたプリンターで印字を行っている。

右のとおり、被告は、本件情報七の機能を有する被告製造のPOS端末機を右各店舗に使用させることを通じて本件情報七を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一六) 本件情報七の2について

(1) 機密情報性

右(九)(本件情報二)と同じ。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属するラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、POS端末機内で磁気カードであるララカードの磁気ストライプ上に書込みが正しく終了しなかった場合は、この旨のメッセージ(ライトエラー等)をPOS端末機に組み込まれた画面に表示し、かつPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシート上に印字している。

右のとおり、被告は、本件情報七の2の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報七の2を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一七) 本件情報八について

(1) 機密情報性

右(一〇)(本件情報三)と同じ。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>ないし<3>のとおり、本件情報八の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報八を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> 落合ショッピングセンター、美作ショッピングセンター、福井アーバンカード、魚津興産、バザールフーズに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、レシートに表示されるポイントについて、ポイント基準額、ポイント倍率指定、商品毎のポイント倍率を設けている。そして、それぞれの項目について、テーブルファイルを、同POS端末機及びストアーコントローラーに設けており、ストアーコントローラーからPOS端末機にダウンローディングして設定・変更を行っている。

<2> ジョイフル朝日、サンプラザに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、レシートに表示されるポイントについて、ポイント基準額、ポイント倍率指定、商品毎のポイント倍率、ポイント発券基準額を設けている。そして、それぞれの項目について、テーブルファイルを同POS端末機及びストアーコントローラーに設けており、ストアーコントローラーからPOS端末機にダウンローディングして設定・変更を行っている。

<3> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、レシートに表示されるポイントについて、商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード(カード種別)毎のポイント倍率、売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額及び発券基準ポイントを設けている。そして、それぞれの項目について、同POS端末機及びストアーコントローラーに対応するテーブルファイルを設けており、同項目の内容の設定・変更については、ストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングして行っている。

(一八) 本件情報八の2について

(1) 機密情報性

右(一一)(本件情報三の2)と同じ。

(2) 被告の漏洩行為

ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、レシートに表示されるポイントについて、ポイント基準額を標準設定で一〇〇円を一点としており、発券基準ポイントを五〇〇点としている。

右のとおり、被告は、本件情報八の2の機能を有する被告製造のPOS端末機を右店舗に使用させることを通じて本件情報八の2を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

(一九) 本件情報九について

(1) 機密情報性

右(一三)(本件情報五)と同じ。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>及び<2>のとおり、本件情報九の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報九を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> バザールフーズに所属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、顧客が、カードなしで現金で買物をし、その後、磁気カードである「バザールカード」の発行を受けて、同磁気カードを使用して買物をした場合、「カードキョウセイコウシン」として、カードを使用しなかった買物のポイント数を加算した累計ポイントをPOS端末機に組み込まれた画面に表示したうえ、レシート上に印字することができ、購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができる。

<2> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用している被告製造のPOS端末機においては、顧客が、カードなしで現金で買物をし、その後、磁気カードである「ララカード」の発行を受けた場合、「ポイントカサン」として、カードを使用しなかった買物のポイント数を加算した累計ポイントをPOS端末機に組み込まれた画面に表示したうえ、レシート上に印字を行うことができ、購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができる。

(二〇) 本件情報一〇について

(1) 機密情報性

顧客からの累計ポイントの残高等に関する問い合わせに対応することができるようにするため、ホストコンピュータに保存されている内容も含めてPOS端末機によって印字することができるようにしておくことが、小売業のサービスとして極めて有効である。

(2) 被告の漏洩行為

被告は、次の<1>ないし<3>のとおり、本件情報一〇の機能を有する被告製造のPOS端末機を各店舗に使用させることを通じて本件情報一〇を漏洩しており、これは、相手方の事前の文書による承諾なしに第三者に開示または漏洩してはならないものとする本件契約第五条一項に違反する。

<1> 福井アーバンカードに属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、累計ポイントがいくらあるかの問合せがあったとき、「カードショウカイ」、「合計テンスウ」と表示して、累計ポイントをレシート上に印字することができる。

<2> バザールフーズに所属する各店舗で使用されている被告製造のPOS端末機においては、累計ポイントがいくらあるかの問合せがあったとき、「カードジョウホウショウカイ」、「点数」と表示して、累計ポイントをレシート上に印字することができる。

<3> ラルズに属する店舗であるラルズプラザ札幌店で使用されている被告製造のPOS端末機においては、磁気カードである「ララカード」に書き込まれている累計ポイント及び最新更新年月日とホストコンピュータのバックアップ用ポイントファイルの前日までの累計ポイント及び前日までの最新更新年月日を、POS端末機に組み込まれたプリンターで、「会員照会(カード)」又は「会員照会(ホスト)」、「ゲンザイポイント」、「サイシュウコウバイビ」等と表示して、印字することができる。

2  被告の主張

(一) 本件情報一のうち、累計ポイントの書込み位置については、原告が開示したフォーマットは、累計ポイントを二六桁目から三一桁目に格納するというものであり、原告の開示したフォーマットが累計ポイントを二八桁目から七〇桁目(ダンプリストでは二七桁目から六九桁目)の領域に書き込むというものであるとの主張は否認する。

(二) 本件情報一ないし一〇は、いずれも公知の技術であり、本件契約第五条但書<2>により機密情報に該当しないものである。

(三) 原告の主張する機密漏洩の事実は否認する。

被告が機密を漏洩していないことの各店舗に共通の理由は、次のとおりである。

(1) 被告が各店舗に納入したPOSシステムは、被告が電子機器メーカーとして原告設立以前の古くから製造、販売して来たPOS機器に関するノウハウに基づき製造したものであり、原告から得た情報を使用したものではない。

(2) 被告が各店舗に納入したPOSシステム向けの磁気カードのフォーマットは、金市舘向けのフォーマットや原告が開示したものとは異なるものである。

二  争点2(本件第八条違反の有無)について

1  原告の主張

(一) 本件契約第八条一項においては、本件契約締結時において出願されていた本POSシステムに関連した発明、考案等についての工業所有権は、当事者間の契約関係においては、出願による法律上の工業所有権としての権利化の有無とは関係なく、原告に単独で帰属する旨の合意がなされている。これは、本件契約第一条において、原告が被告に対し、金市舘のみに本POSシステムに基づくPOS端末機を製造し、販売することを認めている契約であるからである。

また、同時に、本件契約第八条二項で、原告の許諾がなければ、本件契約に記載するところの原告に単独で帰属する「本無体財産権」を第三者に実施させることはできない旨の合意がなされている。これは、当事者間において、本POSシステムに基づくPOS端末機の製造に必要な出願中の権利を含む工業所有権を金市舘以外に使用させることを禁止したものであり、対世的効力を持つ特許権あるいは実用新案権の権利内容と同じ内容の拘束を、当事者間において契約により持たせようとするものである。

(二) 原告は、本件契約締結当時、別紙工業所有権出願目録記載一及び二の発明を特許出願中であり、同目録記載三の考案を実用新案登録出願中であった。これらの出願中の権利は、第八条一項の「本無体財産権」であり、同権利については、第八条二項により、原告の許諾がなければ、出願中の権利内容を具体化する物件を製造し、販売し又は第三者に使用させることはできない。

(三) 被告は、別紙工業所有権出願目録記載一及び二の発明並びに同目録記載三の考案を具現化する物件である別紙物件目録記載(一)ないし(三)の物件を製造し、これを、落合ショッピングセンター、美作ショッピングセンター、福井アーバンカード、魚津興産、ジョイフル朝日、サンプラザ、バザールフーズ及びチューリップの各店舗に販売して使用させているところ、これは、本件契約第八条二項に違反する。

2  被告の主張

(一) 本件契約第八条一項は、本POSシステムに関連して、本件契約締結後に新たにされた発明、考案に関する工業所有権の帰属について規定したものである。

(二) 本件契約第八条第二項は、第一項により原被告の共有となった無体財産権については、相手方の同意なしに第三者に使用、複製、改変の許諾を為し得ないことを定めたものである。

(三) したがって、原告が本件契約締結時にすでに出願中であった工業所有権については、契約上何の規定も存在せず、原告はあくまで法の定めるとおり、工業所有権が認められた場合は単独で権利の行使ができ、工業所有権が認められなかった場合は権利の行使ができないという、当然の結果になるに過ぎない。

三  争点3(本件仮保護の権利の侵害)について

1  原告の主張

(一) 原告は、別紙工業所有権出願目録記載三の実用新案登録出願が別紙公告目録記載のとおり出願公告されたことにより、旧実用新案法第一二条一項に基づき、本件仮保護の権利を有している。

(二) 被告は、別紙公告目録記載の考案に係る物品であるレシートの発券機能を有し、かつ、右レシートの製造に使用する別紙物件目録記載(三)の物件を、製造して、右二1(三)の各店舗に販売し、使用させている。被告の右製造販売は、本件仮保護の権利を侵害するものである。

2  被告の主張

原告の工業所有権出願目録記載三の実用新案登録出願については、拒絶査定がされ、原告は、審判の請求をしたが、特許庁は「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その審決は確定したから、原告の仮保護の権利は、既に消滅している。

四  争点4(損害)について

1  原告の主張

(一) 原告と被告は、本件契約第九条において、損害賠償に関し、原告又は被告が本件契約の約定に違反して自己の責めに帰属すべき理由により相手方に損害を与えたときは、その損害を賠償する旨合意した。

(二) 原告は、被告が本件契約第五条及び第八条に違反して別紙物件目録記載(一)、(二)、(三)又は(四)の物件を製造し、これを次の<1>ないし<5>に属する店舗に販売して使用させた。

<1> 落合ショッピングセンター

使用開始月 平成元年一一月

<2> 美作ショッピングセンター

使用開始月 平成元年一一月

<3> 福井アーバンカード

使用開始月 平成三年四月

<4> 魚津興産

使用開始月 平成二年七月

<5> チューリップ

使用開始月 平成三年一一月

(三) 原告は金市館との間で、昭和六二年一一月七日、M&Cカードシステムの導入契約を締結した。原告は、右導入契約において、M&Cカードシステムの導入サポート料として金五〇〇〇万円、使用料金として月額金四〇〇万円の各収入を得るものとされていた。

(四) 被告の本件契約第五条及び第八条違反行為により、原告は、以下のとおり、M&Cカードシステムの顧客との導入契約締結による得べかりし収入を失い、少なくとも金六億五四〇〇万円の損害を被った。

(1) 右(二)<1>ないし<5>の店舗につき、導入サポート料相当の損害

各金五〇〇〇万円×五=金二億五〇〇〇万円

(2) 使用料相当の損害

<1> 落合ショッピングセンター

金四〇〇万円×三〇か月(平成元年一一月~同四年四月)=金一億二〇〇〇万円

<2> 美作ショッピングセンター

金四〇〇万円×三〇か月(平成元年一一月~同四年四月)=金一億二〇〇〇万円

<3> 福井アーバンカード

金四〇〇万円×一三か月(平成三年四月~同四年四月)=金五二〇〇万円

<4> 魚津興産

金四〇〇万円×二二か月(平成二年七月~同四年四月)=金八八〇〇万円

<5> チューリップ

金四〇〇万円×六か月(平成三年一一月~同四年四月)=金二四〇〇万円

小計 金四億四〇〇万円

以上合計 金六億五四〇〇万円

2  被告の主張

原告の主張を争う。

第四  当裁判所の判断

一  争点1(本件契約第五条違反の有無)について

前記第二の一のとおり、原告と被告が本件契約を締結したことは、契約締結日の点を除き、当事者間に争いがないところ、契約締結日についても昭和六三年七月ないし八月という限度では争いがない。

そして、本件契約の第四条及び第五条によると、第五条は、第四条に基づき相手方から開示された情報の秘密保持義務を定めているものと認められる。

そこで、本件情報一ないし一〇について、それが原告から被告に開示されたかどうか、開示されたとして第五条の秘密保持義務の対象となる情報であるかどうか等について検討することとするが、まず、その前提として、本件契約第五条一項但書<2>の意義について検討する。

本件契約第五条一項但書<2>は、相手方から開示を受けた情報であっても、「公知または公用の情報」は秘密保持の対象とならない旨規定しているが、その趣旨は、契約当事者以外の第三者が現に知り又は容易に知り得る情報の開示を禁止しても実益がない上、そのような情報まで秘密保持義務の対象とすると、契約当事者に過大な負担を課すことになるという理由によるものと解される。右のような趣旨からすると、右の「公知または公用の情報」とは、その情報が全体として公然と知られ又は公然と実施されている情報を含むことはもちろんであるが、それだけではなく、公然と知られ又は公然と実施されている情報を組み合わせることによって容易に想到し得る情報をも含むものと解するのが相当である。なぜなら、公然と知られ又は公然と実施されている情報から容易に想到し得る情報もまた第三者が容易に知り得るという点では同様であるからである。また、本件契約はPOSシステムの製造・販売に関する契約であり、第四条はPOSシステムに関する情報の提供について規定しているから、「公知または公用」の基準となるべき者は、POSシステムを開発、設計したり、その機器を製造、販売する者であると解される。

1  本件情報一について

(一) 前記第二の一の事実に証拠(甲一、六(八三ないし八九頁)、一四(F-2-3)、甲二〇の二、三、甲三〇、三二、四八、乙一二、二五)と弁論の全趣旨を総合すると、原告と金市舘は、昭和六二年一一月七日、金市舘が原告のM&Cカードシステムを導入する旨の契約を締結したこと、右導入に当たり、金市舘は被告製造のPOS端末機を使用することとしたため、被告製造のPOS端末機をM&Cカードシステムに対応させることが必要となったこと、そのため、原告と被告は本件契約を締結したこと、原告は被告に対し、本件契約に基づき、金市舘で稼働するM&Cカードシステム(L-PACK)で使用する磁気カード(アミックカード)のフォーマットを開示したこと、右開示の内容は、<1>磁気カードは日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」準拠のJISⅡ型カードとする、<2>磁気ストライプフォーマットは、カード番号を一二桁目から二四桁目に、ポイント情報(最新累計ポイント及び最新更新年月日)を二六桁目から三七桁目に書き込む、というものであったこと、被告は右の磁気カードのフォーマットに従い、金市舘向けのPOS機器及びプログラムを開発、製造したこと、金市舘は平成元年二月二五日、株式会社丸友産業に対し、営業及び前記M&Cカードシステムの導入契約の契約上の地位を譲渡したこと、ラルズは平成元年六月一三日、株式会社丸友産業を吸収合併したこと、ラルズが使用していたアミックカードの磁気ストライプのフォーマットは、カード番号を一二桁目から二四桁目(ダンプリストでは、一一桁目から二三桁目)に、累計ポイントを二六桁目から三一桁目(ダンプリストでは、二五桁目から三〇桁目)に、最新更新日を三二桁目から三七桁目(ダンプリストでは、三一桁目から三六桁目)に書き込んでいること、全銀協のキャッシュカードの磁気ストライプのフォーマットは、一二桁目から一五桁目が支店コード、一六桁目から二七桁目までが口座番号、二八、二九桁目が任意フィールド、三〇桁目がオンオフ用途区分、三一桁目から四四桁目までがオフライン項目、四五桁目から六九桁目までが予備フィールドとされていること、以上の事実が認められる。

(二) 右認定の事実によると、金市舘で稼働するM&Cカードシステム(L-PACK)で使用する磁気カード(アミックカード)はJISⅡ型カードであるから、原告は、本件情報一のうち、日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」及び「磁気ストライプ付きクレジットカードの磁気的情報記録様式」に準拠した磁気カードを使用対象カードとして採用することを被告に開示したものと認めることができる。

しかし、全銀協のキャッシュカードの磁気ストライプのフォーマットは、一二桁目から一五桁目が支店コード、一六桁目から二七桁目までが口座番号とされているところ、その磁気ストライプ上の位置と、M&Cカードシステムにおいて右支店コードと口座番号を合わせたものに対応すると考えられる会員番号の磁気ストライプ上の位置とを比べてみると、前者が一二桁目から二七桁目であるのに対し、後者は一二桁目から二四桁目であり、続く二五桁目以降には更新ポイントが書き込まれているから、原告が被告に開示した磁気カード(アミックカード)の磁気ストライプのフォーマットは、全銀協のキャッシュカードのそれとは明らかに異なっている。また、原告が被告に開示した磁気カード(アミックカード)の磁気ストライプのフォーマットは、本件情報一の「カード番号情報をクレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている一二桁目から二七桁目(ダンプリストでは一一桁目から二六桁目)までの領域に書き込み、累計ポイント情報(最新更新年月日がある場合はそれを含む。)を同じく右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている二八桁目から(カード番号が二七桁目(ダンプリストでは二六桁目)より前で終了する場合はカード番号が終了した次の桁から)七〇桁目(ダンプリストでは二七桁目から六九桁目)までの領域に書き込む」というのとも異なっている。したがって、原告は、本件情報一のうち、「累計ポイントに関する情報を磁気ストライプ上のどの位置に書き込むかについては、全国銀行協会連合会(以下「全銀協」という。)加盟銀行のキャッシュカードに準じて丸井がクレジットカードに採用している磁気ストライプフォーマット(犯罪防止のため一般には公開されていない)形式(以下「クレジットカード仕様」という。)を採用し、カード番号情報をクレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている一二桁目から二七桁目(ダンプリストでは一一桁目から二六桁目)までの領域に書き込み、累計ポイント情報(最新更新年月日がある場合はそれを含む。)を同じく右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている二八桁目から(カード番号が二七桁目(ダンプリストでは二六桁目)より前で終了する場合はカード番号が終了した次の桁から)七〇桁目(ダンプリストでは二七桁目から六九桁目)までの領域に書き込む。」との情報を被告に開示したとは認められない。

(三) 原告は、被告に開示した磁気カード(アミックカード)の磁気ストライプのフォーマット(甲六号証八五頁)は修正型であり、明示していないが、その前提として原則型である全銀協のキャッシュカードに準じた磁気ストライプのフォーマットを開示した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

(四) そうすると、本件情報一のうち、原告から被告に開示されたと認められるのは、日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」及び「磁気ストライプ付きクレジットカードの磁気的情報記録様式」に準拠した磁気カードを使用対象カードとして採用するとの部分のみとなる。

そして、日本工業規格は、鉱工業品の種類、型式、形状、寸法等を全国的に統一し単純化するために主務大臣が定める基準(工業標準化法二条、一一条、一七条)であって、それは公開されている(同法一六条)上、証拠(甲六(八四頁))と弁論の全趣旨によると、国内の銀行系、信販系カードのほとんどがJISⅡ型カードを採用していたものと認められるから、日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」及び「磁気ストライプ付きクレジットカードの磁気的情報記録様式」に準拠した磁気カードを使用対象カードとして採用することは、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるということができる。

したがって、本件情報一のうち、被告が原告から開示されたと認められる部分は、本件契約第五条の秘密保持義務の対象とはならない。

(五) なお、落合ショッピングセンター、美作ショッピングセンター、魚津興産、バザールフーズ、ラルズに属する各店舗において被告製造のPOS端末機で使用されていると原告が主張する磁気ストライプフォーマットは、右(一)認定の原告が開示したもの(「カード番号を一二桁目から二四桁目に、ポイント情報(最新累計ポイント及び最新更新年月日)を二六桁目から三七桁目に書き込む」)と異なることは明らかであるから、被告が、これらの各店舗に対して、右(一)認定の原告が開示した情報を開示したとも認められない。

2  本件情報一の2について

(一) 証拠(甲五、一五の一、甲五七、乙一九)によると、

(1) 原告が昭和六〇年五月二九日に出願した実用新案登録出願の明細書には、「一定額以上の商品を購入した顧客に、景品を提供したり、サービス券を提供したりするといったサービスは、従来、店頭において購入額に応じてブルーチップス、グリーンスタンプなどと称される切手状印刷物を直接手渡すことにより行われていた。」、「本考案に係るレシート1に、累計ポイント8を表示するためのシステムについて説明する。まず初めての顧客には、来店の際に、磁気カードを介して商品を購入してもらうように磁気カードを発行する。このようにして顧客にはこのカードを介して商品の購入をしてもらうようにするが、この顧客がある商品を購入しようとする場合には、レジにおいてまずカードを呈示してもらい、このカードを、カードに書込まれた情報を読取る機能およびカードに新たな情報を書込む機能を有するとともに計算機能をも有するPOS内に挿入する。このPOSは各店舗内に設けられたCTL(コントローラ)を介して、コンピュータに接続されており、このコンピュータに顧客データバンクが接続されている。そしてこのPOSによってカードにすでに書込まれている今回購入日の前日までの累計ポイントを読取る。つぎにPOS内にカードを挿入した状態で、今回の購入明細を入力し、POSの合計キーを押して各商品の購入額2およびその合計額3を本考案に係るレシート1の明細欄に表示する。・・・次に今回の購入合計額3に応じて今回ポイントをPOSに計算させ、レシートのポイント表示欄に今回ポイント7を表示する。またPOSによってカードから読取られた今回購入日以前の累計ポイントに前述の今回ポイント7を加算して、今回ポイントが加算された新たな累計ポイント8をポイント表示欄9に表示する。次に今回ポイント7が加算された新たな累計ポイント8を、POSの書込み機構を用いてカードに新たに記録する。一方この新たな累計ポイント8は、POSおよびコンピュータを介して顧客データバンクに電送されて記録される。このようなシステムを採用すればカードを介して今回ポイント7および累計ポイント8が即時に計算でき、顧客を長時間待たせることなく直ちにレシートの明細欄4に、今回購入時の購入明細をそしてレシートのポイント表示欄9に今回ポイント7および累計ポイント8を表示することができる。またもしカードを紛失しても、前日までの累計ポイントは顧客データバンクに記録されているので、ガード再発行時にこの累計ポイントをPOSの書込み機能を用いてカードに記録することができる。またこのようなシステムを採用すれば、一日に何回も特定の店で商品を購入したりサービスの提供を受けても、その都度今回ポイント7および累計ポイント8をレシート上に表示することができる。また、このようなシステムでは、各店舗にはPOSおよびCTLを備えつければよく、したがって小型店でも充分採用することができる。また各チェーン店で共通のシステムを利用することもできる。」との記載があること、

(2) 右出願は昭和六一年一二月六日に出願公開されたこと、

(3) 山口県の総合スーパーマーケット丸久は昭和六一年九月、専用のPOSターミナルと専用コンピュータにより運用するカードシステムを導入したが、右カードシステムは、<1>「09ポイントカード」というクレジットカードと会員カードの複合カードを顧客に発行し、顧客は、買物の都度「09ポイントカード」を使用する、<2>クレジットによる一括払、分割払のほか、現金で買物をしても、購入額一〇〇円につき一ポイントが加算され、毎回の購買額に応じてポイントが累積される、<3>今回購入額に応じたポイント及び累積された累計ポイントがレシートに表示される、<4>累計ポイントが五〇〇点になると、五〇〇円相当のサービス券がPOSターミナルから自動的に発券され、顧客に提供される、<5>端数のポイントは、そのまま蓄積されて、次の購買額に加算されていく、というものであること、

(4) 右丸久のカードシステムが昭和六三年八月五日に発行された「流通・サービス業のPOS化戦略」と題する書籍で紹介されたこと、

以上の事実が認められる。

右認定の事実によると、従来、商店等で買物をすると、その購入額に応じてブルーチップやグリーンスタンプといったサービス券を顧客に発行することによって行われていた一般消費者サービスに代わるものとして、小売店が顧客に対しクレジット払と現金払のどちらでも対応できる磁気カードを発行し、この磁気カードを用いてコンピュータとPOS端末機により運用されるカードシステムであって、<1>商品の購入等の都度、顧客が磁気カードを提示し、その提示があると、購入金額に応じたポイントを計算する、<2>今回購入時のポイントと前回購入時点までのポイントを合計し、その累計ポイントを磁気カード上に記録するとともに、レシート上に表示する、<3>右累計ポイントを顧客データバンクに電送して記録する、<4>右累計ポイントがある一定のポイント数に達すると、値引、割引等の特典が受けられる、という内容のものは、本件契約が締結されたころには、公知のシステム(以下「公知のカードポイントシステム」という。)であったと認められる。

(二) 証拠(乙一一)によると、財団法人流通システム開発センターは、昭和五三年三月、「POSシステムに関する調査研究報告書(Ⅱ)-クレジット・カードの標準化-」を作成したこと、右報告書は、クレジット・カードの標準化に関する研究報告書であること、右報告書には標準クレジット・カードの磁気ストライプのフォーマット案(一九、二〇頁)が掲載されているが、そのフォーマット案では、三一桁目から六九桁目が自由使用領域とされていること、右自由使用領域の説明(一九、二〇頁)に候補として最新使用日付が挙げられていること、標準クレジット・カード案の磁気ストライプのフォーマット例(一〇〇、一〇一頁)として、一二桁目から二七桁目を会員番号とした案や三七桁目から三九桁目を最新使用年月日とした案が掲載されていること、以上の事実が認められる。

右認定の事実によると、磁気カードの磁気ストライプに最新使用年月日を書き込むことは、昭和五三年三月には公知の技術であったと認められるところ、前記認定の公知のカードポイントシステムにおいては、最新使用年月日は、最新更新年月日に他ならないと考えられるから、磁気カードを使用するカードポイントシステムにおいて、「磁気カード上の磁気ストライプ内に、カード番号及び累計ポイントの他に累計ポイントの最新更新年月日を書き込む」(本件情報一の2)ことは、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報一の2は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

3  本件情報一の3について

証拠(乙一一、二二、三九)によると、前記「POSシステムに関する調査研究報告書(Ⅱ)-クレジット・カードの標準化-」には、標準クレジット・カードの磁気ストライプフォーマット案として、二桁目にIDコードを、三桁目に業態コードを、八桁目から一一桁目に発行企業コードを書き込んだものが示されており、また、「4.3他システムカードとの識別性」(九六頁)には、IDマーク、業態カード、発行企業コード、口座番号により識別する旨の記載があること、昭和四八年一一月に発行された雑誌「FUJITSU Vol.24 No.6」の銀行のキャッシュディスペンサに関する論稿においては、磁気カードリーダの機能として、「7) カードシャッタ 記録データのある磁気カード以外はそう入阻止」(一五〇頁)との記載があるところ、右の記録データとは利用者の口座番号、暗証、銀行コードなどであり(一四九頁)、右記載は、挿入された磁気カードから口座番号、暗証、銀行コードなどの記録データを読み取り、銀行に記録してあるデータがない場合、即ち、異なったデータであれば、当該磁気カードを排出し、利用者に返すことを意味していること、昭和四九年五月一日に公開された公開特許公報には、「磁気カード方式が各分野に普及され各種の磁気カードが流通される結果、顧客が誤って他の種類の磁気カードを伝票発行装置に挿入することが起きる。この場合その磁気カードの記録内容を破壊することなしに排除することが必要となる。」(三一二頁左上)との記載があること、以上の事実が認められる。

右認定の事実に前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考えると、本件情報一の3「累計ポイントを書き込む前提となるカードの読み取りに際し、クレジットカード仕様のフォーマットのうち一桁目から一一桁目(ダンプリストでは一桁目から一〇桁目)までに、ID、業態コード、企業コードをあらかじめ書き込んでおくことによりカードの読み取り時においてカードの誤使用のチェックを行い、後挿入された場合はカードをチェック後直ちに情報書込読取装置から排出する。」は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報一の3は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

4  本件情報二、七及び七の2について

(一) 証拠(乙一二、二六)と弁論の全趣旨によると、磁気カードへのデータの書込みと印字の処理手順について、昭和四九年五月二〇日発行の雑誌「FUJITSU Vol.25 No.3」の「磁気カードを利用した簡易銀行窓口装置」と題する論稿において、磁気カードを利用した入出金伝票発行機の操作手順を説明した流れ図(七二頁)に、「○磁気カードに入力したデータ書込」の下に「○伝票に印字」と記載されているが、一般に流れ図においては処理の順序は上から下に順次処理されることを示すものであること、昭和五六年七月三〇日に公開された、現金自動支払機、自動入金機などの取引処理装置に関し、特にこれに使用される磁気カード等の磁気媒体に関する発明の公開特許公報には、「取引処理装置は磁気カード1上の取引情報と顧客によって入力された取引情報に基いて取引の可否を判別し、取引可と判別すると顧客が要求した取引内容に応じ、磁気カード1のデータエリア内の記録情報を更新する。・・・更新データの書込みが終了すると、・・・今書込んだばかりのデータを再読取りする。・・・読取り動作を終了すると、読取りデータ記憶装置13の記憶データと書込みデータ記憶装置8にそのまま記憶されていた書込みデータとをデータ照合回路14にて照合する。その照合の結果両者が一致すれば一致信号を出力し、一致しない場合は不一致信号を出力する。不一致の場合取引処理装置は以後エラー処理を実行し、取引の停止や書込み動作異常を知らせる。一致の場合は、同期くずれのフラグがセットされているか否かをアンドゲート15で見る。同期くずれのフラグがセットされていない場合は書込み動作が正常に行われかつ磁気カード1の同期用エリア2に異常ビットが存在しないとして取引成立の処理を実行し、磁気カード1の返却や金銭の出入などを行う。同期くずれのフラグがセットされていればアンドゲート15の出力は“1”となり、この出力がジャーナル・レシート印字部16及び表示部17に供給される。ジャーナル・レシート印字部16ではジャーナル及びレシートに取引記録情報と共に特殊記号や文言を印字し、又表示部17では磁気カード1の異常を知らせる表示を行う。このように磁気カードⅠの異常を知らせる動作を行った後取引処理装置は同期くずれが生じない場合と全く同じ処理を続行し、磁気カード1の返却や金銭の出入を行う。顧客は磁気カード1又は金銭と一緒に排出されたレシートを見て又は表示部17を見て磁気カード1の異常を知り、取引処理装置の運用者にその旨を届け出る。運用者は顧客の届出又はジャーナル用紙に残された取引記録を見て該当する磁気カードの再発行手続をとる。なお、磁気カード1の異常を知らせる手段としてはこの実施例のごとくジャーナル用紙、レシート及び表示部の全てを用いる必要はなく、その中のいずれか一つでも又他の手段を用いてもよい。」との記載があること、以上の事実が認められる。

右の昭和五六年七月三〇日に公開された公開特許公報においては、書込み動作が正常に行われかつ磁気カード1の同期用エリア2に異常ビットが存在しないとして取引成立の処理を実行する場合におけるレシートへの取引記録情報の印字の時期が明示されていないが、同期くずれのフラグがセットされている場合に関する、「ジャーナル・レシート印字部16ではジャーナル及びレシートに取引記録情報と共に特殊記号や文言を印字し、又表示部17では磁気カード1の異常を知らせる表示を行う。このように磁気カード1の異常を知らせる動作を行った後取引処理装置は同期くずれが生じない場合と全く同じ処理を続行し、磁気カード1の返却や金銭の出入を行う。」との記載からすると、書込み動作が正常に行われたことを確認した後、取引成立の処理を実行する中でレシートへの取引記録情報の印字が行われるものと理解することができる。

右認定の事実によると、磁気カードへの更新データの書込みが正しくなされているか否かをチェックした後に、正しくなされている場合は更新データをレシートに印字し、そうでない場合は更新データとともに異常を知らせる表示をレシートに印字するという技術は、右公開特許公報が公開された昭和五六年七月三〇日以降は公知の技術であったと認められる。

(二) 弁論の全趣旨によると、本件情報二、七及び七の2の技術的な意義は、POS端末機で累計ポイントを計算した後、累計ポイントのレシートへの印字と磁気カードへの書込みを行うが、両者の同一性を担保するため、まず磁気カードへの書込みを行い、その書込みが正しぐ終了したことを確認した上でその後に印字を行い、正しく終了しなかった場合は、エラーメッセージをPOS端末機の画面に表示し、かつ、レシートに印字することにより、レシートへの印字と磁気カードへの書込みが同一になるようにしたというものであると認められるところ、前記認定のとおり、磁気カードへの更新データの書込みが正しくなされているか否かをチェックした後に、正しくなされている場合は更新データをレシートに印字し、そうでない場合は更新データとともに異常を知らせる表示をレシートに印字するという技術は、昭和五六年七月三〇日以降、公知の技術であったのであり、これに前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考慮すると、本件情報二、七及び七の2は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報二、七及び七の2は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

5  本件情報三及び八について

(一) 証拠(乙一三、一四、三一ないし三五)によると、

(1) 昭和五六年八月四日に公開された公開特許公報には、「百貨店やスーパーマーケット等においては特定顧客を対象に割引取引を実施している。特定顧客とはその店の株主、取引先、社員、友の会会員等である。一般的にはその割引率は一律ではなくそれぞれに対応して数種決められている。」、「本発明の金銭登録機の割引率自動決定方式は取引種別または取引を行う顧客を識別可能なコード(以下種別コードという)を予め設定して取引高の計算を行う金銭登録機において、メモリ内に前記種別コードの一部桁数と登録された割引率とを対応させて設定したテーブルを格納しておき、」、「予め登録した割引率と対応するコードを示した割引率コードテーブルをメモリに格納しておき、種別コードの一部に付加された割引率コードにより割引率が決定されるから、商品コードと金額の登録による取引の終了後・・・人間の介入なしに直ちに割引の計算に入り取引合計の計算が行われる。」、「いま、販売員が顧客のクレジットカードをカードリーダ16に挿入するとともに、キーボード14でモードを設定し、商品コードと金額の登録を行なう。クレジットカードからは、通常の種別コードの外割引率コードが読み出され、これが、メモリ内の割引コードテーブル10と照合され、登録の有無の判定と登録の有る場合の割引率が決定される。」との記載があること、

(2) 昭和五八年四月二日に公開された公開特許公報には、「大型小売店では、ポイントオブセールス(POS)端末装置を使用して、商品の売上げ状態や商取引きのモード(現金販売、自社クレジットカード、他社クレジットカード等)等をセンターのホストプロセッサで監視している。そのためにPOS端末装置では、モードキイを設けて現金販売、自社クレジットカード、他社クレジットカード、代金引替販売、予約販売というようなモードを設定し、さらにコードにより株主優待、ファミリー販売等のモード種別を入力し、これらに応じたデータが演算されるように構成されている。しかしながら、これらカードによる、あるいは現金販売によるデータを識別するために、オペレータはPOS端末装置のキイボードを操作して、・・・まず取引モードを入力し、次にコードによりモード種別を入力し、クレジットカードを使用する場合にはその口座番号を入力しなければならず、その操作が非常に煩雑であった。本発明は上記の問題を解決するために、自社クレジットカードについて読取るべきカード媒体中に取引種別まで予め記録しておいて、カードについてその口座番号を読取ると共に、モード種別が誤って入力されることも防止されうるようにした取引自動選択処理方式を提供することを目的としている。」、「株主優待カードで買物が行われたとき、・・・株主優待用の割引、例えば一〇パーセント割引の演算が行われ、」との記載があること、

(3) 昭和六二年五月三〇日に公開された公開特許公報には、「販売時点情報管理・・・システム等の端末装置として使用される電子レジスタであって、商品の割引率が割引カード種別対応に登録される割引テーブル・・・を備える」、「近来、・・・百貨店、スーパーマーケット等においてPOSシステムが広く採用されるようになってきた。このシステムの端末機として電子レジスタが利用されており、オペレータの入力操作によって取引が行われる。例えば百貨店等においては友の会会員、株主、あるいは社員等に対する販売、即ち、割引カード種別によってカード等を発行して割引率を決めて割引販売しており、特に期間を決めて特定の割引カード種別に対して異なる割引率が適用される場合があり、」、「割引率テーブル8bは、割引カード種別をキーとして登録された割引率に変更可否のフラグを付加したテーブルである。」との記載があること、

(4) 昭和五六年三月一七日に公開された公開特許公報には、「割引販売とは値札に出している正価に対して値段を割り引いて販売することで、例えば株主割引販売、友の会等の特定会員を対象にした割引販売、あるいは職員に対する割引販売等がある。これらはある率の割引率を乗じて正価より安く販売するものであるが商品の中には酒類や生鮮食品、その他割引の対象としない商品がある。」、「本発明は、・・・プリセットモードにより割引対象外品目をターミナルにプリセットしておき、割引販売の時は、全ての商品を商品コードでこのプリセットされている商品とチェックし、該当しないものだけ割引計算を実行し、該当するものは割り引かない。」との記載があること、

(5) 昭和六一年六月二日に公開された公開特許公報には、「食品・衣料等の割引対象商品と、タバコ・本・レコード等の割引除外対象商品とがあり、また通常取引とクレジット取引とは割引条件が異なることもあって」、「第一図(a)は本発明を実施例を表すPOS端末装置のブロック図、・・・第一図(a)において、3'fは全取扱商品について部門制御情報および割引対象商品と割引除外対象商品とを識別するフラグより構成される部門制御テーブルを格納する部門制御テーブル記憶部」との記載があること、

(6) 昭和六〇年一一月一二日に公告された特許公報には、「ホストプロセッサから端末装置にIPL(Initial Program Loading)を行うデータ処理システムにおいて、ホストプロセッサと端末装置とをマスタユニットを介して接続し、ホストプロセッサからあらかじめプログラムをマスタユニットにロードして保持させ、この保持したプログラムをマスタユニットから伝送速度の早い回線を介して端末装置に伝送する」、「デパートなどではその各階の売り場は販売商品の種類が異なり、同一階の売り場では販売商品の種類は似通っているから、ホストプロセッサaから全端末に同じようなプログラムをロードする必要はなく、各売り場専用のプログラムをロードし、価格の変動などの必要に応じて変更したプログラムを群単位でロードできるようにし」との記載があること、

(7) 昭和六〇年四月二五日に公開され、昭和六三年一一月八日に公告された特許公報には、「かかるPOSシステムにおいて、日替わりや営業時間内に、マークダウン、即ち、指定商品の価格変更(例えばタイムサービス)等が行われる。これは予め計画されていてマークダウンスケジュールといわれ、図示省略した計画表が各電子レジスタ1a、1b、・・・のオペレータに配布されているが、更新データは計画された時間にコンピュータセンタ3からT/C2に伝送し、各電子レジスタ1a、1b、・・は夫々のキーボード部7の更新データ要求釦7bを押すことによって、T/C2より更新データを受信することができる。また更新データ要求釦7bを押すことなく、設定されている時間にT/C2より伝送される更新データも受信することができる。電子レジスタ1a、1b、・・ではこの更新データを記憶して、以後の取引には更新されたデータが使用される。」との記載があること、

以上の事実が認められる。

右認定の事実によると、顧客の種別(カードの種別)毎に割引率を設定すること、商品毎に割引率を設定すること、右割引率をテーブルファイルに格納しておき、自動的に割引計算を行うこと、割引率のデータをホストコンピュータ等からPOS端末機にダウンロードすることは、本件契約締結のころには公知の技術であったことが認められる。そして、弁論の全趣旨によると、M&Cカードシステム等のポイントカードシステムにおいて、ポイントを設定して、それを累積計算するのは、割引、値引きのためであると認められるから、そこにおけるポイントの設定、計算は、割引率の設定、計算に外ならないということができる。

また、右認定の事実によると、POS端末機において売上種別(現金かクレジットカードかなど)に応じたデータの演算を行うことは公知の技術であった上、売上種別(現金かクレジットカードかなど)毎に割引率を違えること自体は、誰でも思いつくことであるといえる。

さらに、右2(一)認定の事実によると、累計ポイントが一定の点数になるとサービス券がPOSターミナルから自動的に発券されるシステムが公知公用であったことが認められるが、発券基準ポイントの設定は、そのようなシステムに必然的に伴うものと考えられる。

以上に前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考慮すると、本件情報三及び八は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報三及び八は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

6  本件情報三の2及び八の2について

前記2(一)認定のとおり、山口県の総合スーパーマーケット丸久が昭和六一年九月から導入したカードシステムは、購入額一〇〇円につき一ポイントが加算され、累計ポイントが五〇〇点になると、五〇〇円相当のサービス券がPOSターミナルから自動的に発券されるというものであり、これに前記5認定の事実を総合すると、本件情報三の2及び八の2は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報三の2及び八の2は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

7  本件情報四について

本件情報四の今回ポイントの計算手順は、<1> 商品価格にあらかじめ設定されたポイント倍率をかけて積を求め、その積の和を求める、<2> <1>で求めた積の和をあらかじめ設定された基準額で割り、一の位まで商を求めてこれを今回ポイントとする、<3> 今回ポイントと前回までのポイントの合計を累計ポイントとする、というものであるところ、前記5認定のとおり、カードポイントシステムにおいて、商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード毎のポイント倍率、売上種別毎のポイント基準額を設定することは公知の技術又はそれから容易に想到し得る技術であり、ポイント倍率及びポイント基準額を基に今回ポイント及び累計ポイントを計算する右の<1>ないし<3>の計算手順は、ごくありふれたものにすぎない。

以上に前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考慮すると、本件情報四は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報四は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

8  本件情報五及び九について

本件情報五及び九は、累計ポイントを購入と関係なく加算減算することができることを技術内容とし、その必要性について、原告は、前記第三の一1(一三)(1)のとおり主張する。しかし、誤った操作をしたときなどのことを考えると、累計ポイントを購入と関係なく加算減算することができることが必要であるのは明らかであり、そのこと自体は極めてありふれたものであって、前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考慮すると、本件情報五及び九は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報五及び九は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

9  本件情報六について

証拠(乙二八)と弁論の全趣旨によると、コンピュータによる情報処理においてバッチ処理を行うことは極めてありふれた技術であると認められる。また、原告は、本件情報六について、「前日の累計ポイント情報をホストコンピュータに残しておくことにより、磁気ストライプを傷つけあるいは紛失する等してカードを読み込めない場合に、前日までの累計ポイントを書き込んだ新たなカードの発行を顧客の要請に従って行うことができる。」(前記第三の一1(一四)(1))とも主張するが、これは、ホストコンピュータにバックアップしておくということにすぎず、バックアップしておくこと自体は極めてありふれた技術であると考えられる。そして、これらに、既に説示したところを合わせ考えれば、本件情報六は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報六は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

10  本件情報一〇について

証拠(乙一六)と弁論の全趣旨によると、昭和六三年三月に発行された「未来型中小小売商業情報化実験プロジェクト事業報告書」には、顧客にICカードを発行し、売上額に応じて金券類似の機能を有するスタンプをICカードに記録して顧客に交付するサービスにおいて、「ICカード内のスタンプ残数の照会サービスを行う」(一一八頁)、「顧客ICカードについては、金額もしくはスタンプ枚数のゼロ打ち入力でICカードのデータをプリント(レシート)ができる様にする。」(一二二頁)との記載があることが認められるから、磁気カードに書き込まれている情報を照会し、その照会結果をプリンターでレシート上に印字することは、昭和六三年三月には公知の技術であったということができる。また、ホストコンピュータのバックアップ用ポイントファイルの情報は、磁気カードに書き込まれている情報をバックアップしたものであるから、それの照会は、磁気カードに書き込まれている情報の照会に代わるもので、磁気カードに書き込まれている情報の照会と同趣旨のものである。そして、以上述べたところに前記2(一)認定の公知のカードポイントシステムを合わせ考慮すると、本件情報一〇は、本件契約第五条一項但書<2>の「公知または公用の情報」に当たるものと認められる。

そうすると、本件情報一〇は、本件契約第五条一項の秘密保持義務の対象ではないというべきである。

11  以上のとおりであるから、被告には、本件情報一ないし一〇について、本件契約第五条一項の秘密保持義務は認められない。

二  争点2(本件契約第八条の侵害の有無)について

1  本件契約第八条は、前記第二の一3のとおりであるところ、同条一項は、「本POSシステムに関連した発明、考案等についての工業所有権(出願する権利を含む。)及び著作権の帰属は以下の通りとする。」としたうえで、原則は原告に帰属するが、但書の定める一定の場合には原告と被告の共有になる旨定めており、その契約文言によると、契約当事者間において、本POSシステムに関連する工業所有権及び著作権の帰属を定めたものであると解される。

また、同条二項は、「前項但し書きにより、甲・乙共有に属した本無体財産権については甲及び乙は相手方の許諾がなければこれを第三者に使用・複製・改変の許諾をしてはならない。」と規定しており、右契約文言によると、同条二項は、同条一項但書によって原告と被告の共有となった工業所有権及び著作権を第三者に使用等させるには相手方の許諾を要することを定めたものであると解される。

2  原告は、別紙工業所有権出願目録記載一及び二の特許出願及び同目録記載三の実用新案登録出願が本件契約第八条一項の「本無体財産権」の出願中の権利に当たり、同条二項により、被告は、右出願中の権利について原告の許諾がなければ実施することができない旨主張するが、右出願中の権利は、本件契約締結の時点よりも前に原告が出願していたものであるから、同条一項但書により原告と被告の共有となる権利でないことは明らかである。

そして、本件契約第八条は右1のとおり解されるから、右出願中の権利について同条二項が適用される余地はないというべきである。

原告は、本件契約第八条の解釈について右のとおり主張するが、これは第八条の契約文言に反するのみならず、本件契約全体を見ても原告主張のとおり解釈すべき契約文言はなく、他に原告主張の解釈を裏付ける事情も認められない。

したがって、被告には、別紙工業所有権出願目録記載一及び二の特許出願に係る各発明及び同目録記載三の実用新案登録出願に係る考案の実施について、本件契約第八条二項に基づき原告の許諾を受けるべき義務は認められない。

三  争点3(本件仮保護の権利の侵害の有無)について

証拠(甲一五の九、一〇、甲五七、乙一〇、四一の一、二)によると、別紙工業所有権出願目録記載三の実用新案登録出願については、平成元年三月九日、拒絶査定がなされ、その後、原告は審判を請求し、平成四年四月二七日、出願公告が行われたが、株式会社タツノ・メカトロニクスから異議の申立てがなされ、特許庁は、平成六年三月一一日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をしたこと、原告は東京高等裁判所に対し、右審決の取消請求訴訟を提起したが、同裁判所は、平成九年一一月一一日、原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡し、右判決は、同月二八日確定したこと、以上の事実が認められる。右認定の事実によると、原告は、本件仮保護の権利を有しない。

四  結論

以上のとおりであるから、原告の本件契約第五条、第八条及び本件仮保護の権利に基づく差止請求及び本件契約第九条に基づく損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 中平健)

物件目録

(一) 情報記録の可能な磁気カードに書き込まれた情報の読取りおよび新たな情報の書込みの機能を有する情報書込読取装置が接続あるいは内臓され、計算機能とともに左記のステップaないしeまでの各機能を有し、かつレシート上に今回購入額に応じた今回ポイント及び同今回ポイントを含めて今回購入時までにした累計購入額に応じた累計ポイントを表示するPOS端末機。

a 接続あるいは内蔵された情報書込読取装置に情報記録の可能な磁気カードを挿入し、その挿入された磁気カードに予め書込まれている今回の購入の前回までの累計ポイントを読み取る。

b 入力された今回の購入額明細及び合計指示により今回購入合計額を計算するとともに、その合計額に応じた今回ポイントを計算する。

c ステップaで読取られた今回購入の前回までの累計ポイントにステップbで得られた今回ポイントを加算して今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを計算して、この累計ポイントを、今回購入時の各商品の購入額およびその合計額ならびに今回ポイントとともにレシート上に表示する。

d 今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを前記情報書込読取装置により磁気カードに記録する。

e 今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、コンピューターを介して顧客データバンクに電送して記録する。

(二) 左記aの構成を備えた磁気カードを、左記bからhのステップのとおり利用することができる機能を有するPOS端末機。

a 磁気カードの記録領域に、磁気カードを他の磁気カードから区別し特定する認識番号を記録するカード番号欄と、購入累計額に応じた累計ポイントを記録する累計ポイント欄が設けられている。

b 商品を購入する際に、顧客が呈示した磁気カードを、情報を書込み読取る情報書込読取装置に挿入する。

c 前記情報書込読取装置により、前記磁気カードのカード番号欄から認識番号を読取って前記磁気カードを他の磁気カードから区別し特定する。

d 前記情報書込読取装置により、前記磁気カードの累計ポイント欄から前回購入までの累計ポイントを読み取る。

e 前記累計ポイントに今回購入額に応じたポイントを加算して今回購入までの累計ポイントを演算する。

f 前記情報書込読取装置により、前記磁気カードの累計ポイント欄に演算された今回購入までの累計ポイントを書き込む。

g 前記情報書込読取装置に接続された記憶手段に、少なくとも前記累計ポイントおよび今回の購入データを前記認識番号に関連させて記憶させる。

h 商品を購入する際に顧客が呈示した磁気カードを利用して各顧客の提示した磁気カードを識別しながら、その顧客のカード内の累計ポイントを更新する。

(三) 左記AないしFの内容が記載されたレシートを発行する機能を有するPOS端末機。

A レシートを発行した店名が記載された発行店名欄がある。

B 発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄がある。

C レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄がある。

D1 今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄がある。

D2 商品毎の購入額が記載された購入額欄がある。

D3 購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄がある。

D4 預り金額が記載された預り金額欄がある。

D5 釣銭額が記載された釣銭額欄がある。

E1 D2記載の購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄がある。

E2 E1記載の今回ポイントを含み今回購入時までの所定期間の購入により発生したポイントを累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄がある。

F 商品の購入に利用したカードの番号が記載されたカード番号欄がある。

(四) 左記1ないし10のいずれかの機能の一つでも実現するPOS端末機

1 日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」及び「磁気ストライプ付きクレジットカードの磁気的情報記録様式」に準拠した磁気カードを使用対象カードとして採用し、さらに累計ポイントに関する情報を磁気ストライプ上のどの位置に書き込むかについては、全銀協(全国銀行協会連合会)加盟銀行のキャッシュカードに準じて株式会社丸井がクレジットカードに採用している磁気ストライプフォーマット(犯罪防止のため一般には公開されていない)形式(以下、便宜上「クレジットカード仕様」という)を採用し、カード番号情報を右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている一二桁目から二七桁目(ダンプリスとでは一一桁目から二六桁目)までの領域に書き込み、累計ポイント情報(最新更新年月日がある場合はそれを含む)を同じく右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている二八桁目から(カード番号が二七桁目(ダンプリストでは二六桁目)より前で終了する場合はカード番号が終了した次の桁から)七〇桁目(ダンプリストでは二七桁目から六九桁目)までの領域に書き込む。

1の2 磁気カード上の磁気ストライプ内に、カード番号及び累計ポイントの他に累計ポイントの最新更新年月日を書き込む。

1の3 累計ポイントを書き込む前提となるカードの読み取りに際し、クレジットカード仕様のフォーマットのうち一桁目から一一桁目(ダンプリストでは一桁目から一〇桁目)までに、ID、業態コード、企業コードをあらかじめ書き込んでおくことによりカードの読み取り時においてカードの誤使用のチェックを行い、後挿入された場合はカードをチェック後直ちに情報書込読取装置から排出する。

2 POS端末機で累計ポイントを計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、まず同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントを移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書き込みを開始させ、POS端末機に組み込まれたプリンターでレシートに印字を行う前に同書き込みを終了させる。

3(一) 磁気カードに書き込まれるポイントについて、

<1> 商品毎(品番別)のポイント倍率

<2> 識別コード(一般カード、社員カード等のカード種別)毎のポイント倍率

<3> 売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額

<4> 発券基準ポイント

を設け、それぞれに関してPOS端末機及びストアーコントローラーにテーブルファイルを設定する。

(二) 上記項目の内容の設定・変更についてはストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングしてこれを行う。

3の2 磁気カードに書き込まれる累計ポイントに関し、その標準設定内容としてポイント基準額を一〇〇円で一点とし、発券基準ポイントを五〇〇点としてテーブルファイルに設定する。

4 POS端末機内プログラムでポイント計算を行う際、左記の一定の手順に従って商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード毎のポイント倍率、売上種別毎のポイント基準額のテーブルファイルの設定内容を当該プログラム内のエリアに読み込み、今回ポイント及び今回までの累計ポイントの計算を行なう。その後計算により算出された今回までの累計ポイントを磁気カードに書き込む。

<1> 商品登録時

品番テーブルより該当品番のポイント倍率を得て、値引又は割引後の明細金額(商品価格)とポイント倍率の積を求める。同積を商品登録した全商品についてそれぞれ求め、ポイント倍率を反映させた累計金額(積の和)を計算する。

<2> 預り金入力後

売上種別(現金・一回払・分割払)のポイント基準額のテーブルファイルより選択されたポイント基準額を得て、<1>で求められた累計金額を同ポイント基準額で除算し、その商を求める。そして同商の小数点以下を切り捨てて整数値を今回ポイントとする。

そして、同今回ポイントと磁気ストライプから読み込んだ前回までの累計ポイントを加算し今回までの累計ポイントを算出する。

5 購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができ加減算した結果の累計ポイントを磁気カードに書き込むことができる。

6 ホストコンピュータにバックアップ用のポイントファイルを持ち、POS端末機における売上・返品処理、ポイント強制処理及びポイント発券処理時に、カード番号などとともに磁気カードに書き込んだ累計ポイントをホストコンピュータに送信し、バッチ更新(その都度更新するのではなく一括して更新)する。

7 POS端末機で累計ポイントを計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、先ず同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントを移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書き込みを開始させ、書き込みが正しく終了した後に、同POS端末機プログラム内のレシート印字エリアに累計ポイントの数値を移し、POS端末機に組み込まれたプリンターでレシートへ印字を行う。

7の2 磁気カード内の磁気ストライプ上に書込が正しく終了しなかった場合は、この旨のメッセージ(ライトエラー等)をPOS端末機に組み込まれた画面に表示し、かつPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシートに印字する。

8(一) レシートに表示されるポイントについて、

<1> 商品毎(品番別)のポイント倍率

<2> 識別コード別(一般カード、社員カード等のカード種別)毎のポイント倍率

<3> 売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額

<4> 発券基準ポイントを設け、

それぞれに関してPOS端末機及びストアーコントローラーにテーブルファイルを設定する。

(二) 上記項目の内容の設定・変更についてはストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングしてこれを行う。

8の2 レシートに表示されるポイントの標準設定内容としてポイント基準額を一〇〇円で一点とし、発券基準ポイント額を五〇〇点としてテーブルファイルに設定する。

9 購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができ、加減算した結果の累計ポイントをPOS端末機に組み込まれた画面に表示し、かつPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシート上に印字を行うことができる。

10 POS端末機から磁気カードに書き込まれている累計ポイント及び最新更新年月日とホストコンピュータのバックアップ用ポイントファイルの前日までの累計ポイント及び前日までの最新更新年月日を照会することができ、照会結果をPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシート上に印字を行うことができる。

工業所有権出願目録

一 特許出願一

出願日 昭和六〇年五月二九日

出願番号 特願昭六〇-一一六二四八号

公開日 昭和六一年一二月三日

公開番号 特開昭六一-二七三六六三号

発明の名称 レシート上の累計ポイント表示システム

特許請求の範囲

下記のステップa~eを含むことを特徴とする、レシート上に今回購入額に応じた今回ポイントおよびその今回ポイントを含めて今回購入時までにした累計購入額に応じた累計ポイントを表示するシステム。

a 情報記録の可能な磁気カードをカードに書き込まれた情報の読取り機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに計算機能を有するPOS内に挿入し、予じめカードに書込まれている今回の購入日の前回までの累計ポイントを読取る。

b POSに今回の購入額明細を入力し次いで合計キーを押して今回購入合計額を計算するとともに、その合計額に応じた今回ポイントを計算する。

c ステップaで読取られた今回購入日の前日までの累計ポイントにステップbで得られた今回ポイントを加算して今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSにより計算して、この累計ポイントを今回購入時の各商品の購入額およびその合計額ならびに今回ポイントとともにレシート上に表示する。

d 今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSの有する書き込み機能によりカードに記録する。

e 今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、POSおよびコンピューターを介して顧客データバンクに電送して記録する。

二 特許出願二

出願日 昭和六〇年五月二九日

出願番号 特願昭六〇-一一六二四九号

公開日 昭和六一年一二月四日

公開番号 特開昭和六一-二七三七七三号

発明の名称 磁気カードの利用方法

特許請求の範囲

磁気カードの記録領域に、磁気カードの所有者を特定する認識番号を記録するカード番号欄と、購入累計額に応じた累計ポイントを記録するカード番号欄と、購入累計額に応じた累計ポイントを記録する累計ポイント欄とを設け商品を購入する際に、顧客に呈示した磁気カードを、情報を書込み読取る情報書込読取装置に挿入し、前記情報書込読取装置により、前記磁気カードのカード番号欄から認識番号を読取って前記カードの所有者を特定し、前記情報書込読取装置により、前記磁気カードの累計ポイント欄から前回購入までの累計ポイントを読取り、前記累計ポイントに今回購入額に応じたポイントを加算して今回購入までの累計ポイントを演算し、前記情報書込読取装置により、前記磁気カードの累計ポイント欄に演算された今回購入までの累計ポイントを書込み、これとともに、前記情報書込読取装置に接続された記憶手段に、少なくとも前記累計ポイントおよび今回の購入データを前記認識番号に関連させて記憶させることにより、商品を購入する際に顧客が呈示した磁気カードを利用して各顧客を識別しながら、その顧客の累計ポイントを更新することを特徴とする磁気カードの利用方法。

三 実用新案登録出願

出願日 昭和六〇年五月二九日

出願番号 実願昭六〇-八〇三〇〇号

公開日 昭和六一年一二月六日

公開番号 実開昭六一-一九六〇七〇号

考案の名称 レシート

実用新案登録請求の範囲

レシートを発行した店名が記載される発行店名欄と、

発行したレシートを特定する番号が記載されるレシート発行番号欄と、

レシートが発行された発行時点が記載される発行時点欄と、

今回購入した各商品の購入額と、前記各購入額を合計した購入合計額が記載される購入額明細欄と、

前記購入合計額に応じた今回ポイントと、前記今回ポイントを含み今回購入時までの所定期間の購入額を累計した累計購入額に応じた累計ポイントが記載されるポイント表示欄と、

商品の購入に利用したカードの番号が記載されるカード番号欄と

を有することを特徴とするレシート。

公告目録

出願日 昭和六〇年五月二九日

出願番号 実願昭六〇-八〇三〇〇号

公開日 昭和六一年一二月六日

公開番号 実開昭六一-一九六〇七〇号

考案の名称 レシート

公告日 平成四年四月二七日

実用新案登録請求の範囲

レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、

発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、

レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、

今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、前記商品毎の購入額が記載された購入額欄と、前記購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを有する購入額明細欄と、

前記購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄と、前記今回ポイントを含み今回購入時までの所定期間の購入により発生したポイントを累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄とを有するポイント表示欄と、

商品の購入に利用したカードの番号が記載されたカード番号欄とを有することを特徴とするレシート。

機密情報目録

一 日本工業規格「磁気ストライプ付きクレジットカード」及び「磁気ストライプ付きクレジットカードの磁気的情報記録様式」に準拠した磁気カードを使用対象カードとして採用し、さらに累計ポイントに関する情報を磁気ストライプ上のどの位置に書き込むかについては、全国銀行協会連合会(全銀協)加盟銀行のキャッシュカードに準じて株式会社丸井がクレジットカードに採用している磁気ストライプフォーマツト(犯罪防止のため一般には公開されていない)形式(以下、便宜上「クレジットカード仕様」という)を採用し、カード番号情報を右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている一二桁目から二七桁目(ダンプリストでは一一桁目から二六桁目)までの領域に書き込み、累計ポイント情報(最新更新年月日がある場合はそれを含む)を同じく右クレジットカード仕様の磁気ストライプ上の任意使用領域とされている二八桁目から(カード番号が二七桁目(ダンプリストでは二六桁目)より前で終了する場合はカード番号が終了した次の桁から)七〇桁目(ダンプリストでは二七桁目から六九桁目)までの領域に書き込む。

一の2 磁気カード上の磁気ストライプ内に、カード番号及び累計ポイントの他に累計ポイントの最新更新年月日を書き込む。

一の3 累計ポイントを書き込む前提となるカードの読み取りに際し、クレジットカード仕様のフォーマットのうち一桁目から一一桁目(ダンプリストでは一桁目から一〇桁目)までに、ID、業態コード、企業コードをあらかじめ書き込んでおくことによりカードの読み取り時においてカードの誤使用のチェックを行い、後挿入された場合はカードをチェック後直ちに情報書込読取装置から排出する。

二 POS端末機で累計ポイントを計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、まず同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントを移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書き込みを開始させ、POS端末機に組み込まれたプリンターでレシートに印字を行う前に同書き込みを終了させる。

三(一) 磁気カードに書き込まれるポイントについて、

<1> 商品毎(品番別)のポイント倍率

<2> 識別コード(一般カード、社員カード等のカード種別)毎のポイント倍率

<3> 売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額

<4> 発券基準ポイント

を設け、それぞれに関してPOS端末機及びストアーコントローラーにテーブルファイルを設定する。

(二) 上記項目の内容の設定・変更についてはストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングしてこれを行う。

三の2 磁気カードに書き込まれる累計ポイントに関し、その標準設定内容としてポイント基準額を一〇〇円で一点とし、発券基準ポイントを五〇〇点としてテーブルファイルに設定する。

四 POS端末機内プログラムでポイント計算を行う際、左記の一定の手順に従って商品毎(品番別)のポイント倍率、識別コード毎のポイント倍率、売上種別毎のポイント基準額のテーブルファイルの設定内容を当該プログラム内のエリアに読み込み、今回ポイント及び今回までの累計ポイントの計算を行なう。その後計算により算出された今回までの累計ポイントを磁気カードに書き込む。

<1> 商品登録時

品番テーブルより該当品番のポイント倍率を得て、値引又は割引後の明細金額(商品価格)とポイント倍率の積を求める。同積を商品登録した全商品についてそれぞれ求め、ポイント倍率を反映させた累計金額(積の和)を計算する。

<2> 預り金入力後

売上種別(現金・一回払・分割払)のポイント基準額のテーブルファイルより選択されたポイント基準額を得て、<1>で求められた累計金額を同ポイント基準額で除算し、その商を求める。そして同商の小数点以下を切り捨てて整数値を今回ポイントとする。

そして同今回ポイントと磁気ストライプから読み込んだ前回までの累計ポイントを加算し今回までの累計ポイントを算出する。

五 購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができ加減算した結果の累計ポイントを磁気カードに書き込むことができる。

六 ホストコンピュータにバックアップ用のポイントファイルを持ち、POS端末機における売上・返品処理、ポイント強制処理及びポイント発券処理時に、カード番号などとともに磁気カードに書き込んだ累計ポイントをホストコンピュータに送信し、バッチ更新(その都度更新するのではなく一括して更新)する。

七 POS端末機で累計ポイントを計算後、POS端末機プログラム内の計算結果エリアから、先ず同POS端末機プログラム内の書き込みエリアに累計ポイントを移し、POS端末機に接続された情報書込読取装置で磁気カードへの書き込みを開始させ、書き込みが正しく終了した後に、同POS端末機プログラム内のレシート印字エリアに累計ポイントの数値を移し、POS端末機に組み込まれたプリンターでレシートへ印字を行う。

七の2 磁気カード内の磁気ストライプ上に書込が正しく終了しなかった場合は、この旨のメッセージ(ライトエラー等)をPOS端末機に組み込まれた画面に表示し、かつPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシートに印字する。

八(一) レシートに表示されるポイントについて、

<1> 商品毎(品番別)のポイント倍率、

<2> 識別コード別(一般カード、社員カード等のカード種別)毎のポイント倍率、

<3> 売上種別(現金払・一回払・分割払)毎のポイント基準額

<4> 発券基準ポイント

を設け、それぞれに関してPOS端末機及びストアーコントローラーにテーブルファイルを設定する。

(二) 上記項目の内容の設定・変更についてはストアーコントローラーからPOS端末機へダウンローディングしてこれを行う。

八の2 レシートに表示されるポイントの標準設定内容としてポイント基準額を一〇〇円で一点とし、発券基準ポイント額を五〇〇点としてテーブルファイルに設定する。

九 購入と連動せずに累計ポイントを強制的に加減算することができ、加減算した結果の累計ポイントをPOS端末機に組み込まれた画面に表示し、かつPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシート上に印字を行うことができる。

一〇 POS端末機から磁気カードに書き込まれている累計ポイント及び最新更新年月日とホストコンピュータのバックアップ用ポイントファイルの前日までの累計ポイント及び前日までの最新更新年月日を照会することができ、照会結果をPOS端末機に組み込まれたプリンターでレシート上に印字を行うことができる。

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